個人を活かす経理部体制のすすめ(上) ―経理スタッフの意義を見直すことから始めてみよう―
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せるような,解決力に長けている人は少ないでしょう。ですがこれは単に経験値が不足しているからで,決して能力が乏しいからではありません。皆平等に機会を提供することで,いずれは末端スタッフが打ち出した解決策が大きな意味を持つこともあるでしょう。◯2経理部面談シート具体例シートの構成は大きく2つに分かれています。上段は経理部全体について,下段は個人の担当業務を通して,それぞれ各々が感じる問題点・課題点と,それに対しての解決策を記入するようになっています。このサンプルとなっているスタッフは経理部全体について,“役割分担が明確でないため,経理部内での連携がとれていない”“会議がマンネリ”と問題点をあげています。経理部長は面談によってこれらの問題提起を受けたことで,他の経理スタッフへもこの問題点についてどう考えているのかヒアリングし,本件について次回の経理部内会議の議題にすることを計画しています。このスタッフの問題提起が,他の経理スタッフの意見を引き出す機会を生んだのです。経理部内会議では,きっとスタッフの人数と同じ数くらいの解決策が生まれたことでしょう。また,このスタッフは“資料を出力する際の用紙についてムダを感じる”とも問題提起しています。この視点は,まさに実務に携わるスタッフクラスだから,生まれたものでしょう。このスタッフは“紙ベースで出力するものをリスト化して限定する”と解決策も提起しています。経理部長は面談後,このスタッフの成長を促す意味も込めて,具体的な提案内容が表されている叩き台を作成するように指示しています。この提案から経理部全体のコスト意識の向上が実現すれば,出力する紙以外に対してのコスト意識の向上にもつながり,それが他の部署にも影響を及ぼすことで,社内全体のコスト意識改善に繋がっていくかもしれません。次に個人の担当業務についての問題点・課題点とその解決策を見てみましょう。このスタッフは原価計算と経営会議の資料作成を主に担当しているようですが,まず原価計算についてはマニュアルどおりの一辺倒な集計方法に疑問を感じています。またその解決策として,今後は資材部や工事部とも連携をとりながら資材についての仕様を精査し,他の建設物にも代替品の提案ができないのか,とも提起しています。これも担当として日々,資材情報に関する生の経理データに触れているからこそ,生まれる課題・対策だと言えます。経理部長は,このスタッフが定型業務を黙々とこなしているのみではなく,他の部門との連携を視野に入れ,自らの役割の中で,原価圧縮する姿勢を垣間見ることで,さらに積算に関する情報を与えて,スタッフに対して具体的なプラン創りを支援しようとしています。こういった面談は,スタッフの1人ひとりの姿勢・適性が鮮明に表れます。役割分担の見直しを図り,適材適所な経理体制を作り上げる助けとなることは間違いありません。また,このシートは“スタッフから部長への提起”⇒“部長からスタッフへアドバイス”でひとま経営に強い経理部構築の提案5

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